Department of Psychiatry, Niigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences

新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野

Department of Psychiatry, Niigata University Medical & Dental Hospital

新潟大学医歯学総合病院精神科

研究グループ紹介
臨床精神薬理グループ

 薬剤の作用部位である各種受容体やトランスポーター蛋白などの薬力学的因子、薬物血中濃度を規定する薬物代謝酵素に代表される薬物動態学的因子における個体差が、抗うつ薬や抗精神病薬の臨床効果・副作用に及ぼす影響についてゲノム解析を用いた検討を行っています。現在、順調にサンプル収集が行われており、臨床効果・副作用の予測に有用な遺伝情報が蓄積されつつあります。今後さらに検討を加えることにより、個人個人に適したオーダーメイド治療の確立を目指しています。

分子遺伝グループ

 当グループは精神疾患の生物学的要因を明らかにし、それに基づいた新しい治療法開発に貢献することを目標に、精神疾患の分子遺伝研究を行っています。主な対象疾患は統合失調症で、日本において初めて単一の統合失調症多発家系の連鎖解析を行い、候補領域として3qと4qを同定しました(図)(Am J Med Genet B, 2007)。また神経伝達物質やサイトカインなどに関連した統合失調症感受性候補遺伝子の症例・対照研究およびTDT研究にも意欲的に取り組んでおり、多くの成果を上げています。
 さらに、統合失調症連鎖研究の全国共同グループであるJapanese Schizophrenia Sib-pairs Linkage study Group(JSSLG)をはじめとする多施設共同研究にも参加しており、JSSLGからは統合失調症連鎖領域として1p21.2-1p13.2が報告されました(Am J Hum Genet, 2005)。現在は自閉症スペクトラム障害やパニック障害についても解析を進めるとともに、神経心理・脳画像・神経生理など中間表現型の解析にも取り組んでいます。

分子遺伝グループ

画像生理グループ

 ヒト固有の認知・行動特性と脳の構造・機能には密接な関係があります。我々の研究グループは、精神疾患が示す多彩な認知・行動異常を、非侵襲的脳構造・機能計測を用いて解明することを目標としています。主に超高磁場MRIを用いて、統合失調症の拡散テンソル解析、強迫性障害のMRスペクトロスコピー(MRS)、児童精神医学グループと共同で自閉症スペクトラム障害(ASD)のMRSと視床・小脳体積測定、フラクタル解析、さらに認知症・軽度認知障害の脳萎縮・脳血管障害の分析等を行ってきました。
 一方、脳構造の変化が現れにくいより機能的な精神疾患、例えばパニック障害については、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)や自律神経機能計測を用いて研究しています。パニック障害ではパニック発作のない寛解期でも自律神経系の調節異常が存在することが判明し、パニック障害の高い再発率の生物学的基盤の1つと考えられます。このNIRSに遺伝子情報、例えばセロトニントランスポータ遺伝子の変異解析を合体させ、次年度は社交不安障害の病態、中越大震災後の精神ストレスの長期化を研究する予定です。
 今後10年以内に、非侵襲的脳構造・機能計測は臨床検査として応用される段階に突入すると想像され、我々もその実現に貢献すべく日々努力を重ねています。

発達精神医学グループ

 発達精神医学グループは発達障害の病態を理解し、責任脳病変を明らかにするために、広汎性発達障害(PDD)や注意欠如・多動性障害などの疫学研究、脳画像研究、分子遺伝研究、生化学研究、治療介入研究など多角的包括的に研究を進めています。2007年に「新潟大学こころの発達医学センター」が設立され上記研究を精神科、小児科、生化学教室による教室・講座の枠組みを超えた共同研究を行っています。またセンター主催で,一般の方々や医療、教育、福祉関係者,学生、研修医を対象に,近年,深刻な社会問題となっている子どものこころの発達についての啓発・教育・人材育成を目的に「新潟こころの発達医学セミナー」を平成20年より年一回開催しております。
 現在までにPDDにおいては、扁桃体領域の神経発達障害(Biol Psychiatry, 2007)、視床の体積異常、セロトニン・トランスポーターおよびセロトニン受容体の遺伝子多型が脳体積・生化学代謝に及ぼす影響、新潟県一地域におけるPDDの有病率、その他では、中越地震、中越沖地震などの大規模災害後の心的外傷後徴候などの推移(Gen Hosp Psychiatry, 2007, Psychiatry Clin Neurosci, 2009)を雑誌・学会などで報告しています。

分子神経生物学グループ

 脳研究所分子神経生物学分野などと共同で、統合失調症の病態解明を目指した研究を行っています。当グループの特徴は基礎教室に所属して自分の手で基礎実験を行うことです。
 これまで統合失調症患者の死後脳組織や末梢血における神経栄養因子・サイトカイン機能異常を同定するとともに、統合失調症の動物モデルを作成してきました。近年は脳研究所生命科学リソース研究センターの協力を得て患者死後脳を用いた脳内遺伝子多型解析も行っています。また統合失調症の検査キット開発について多施設共同研究を行い、その実用化が期待されています。

精神療法グループ

 境界例、摂食障害などの治療困難な症例に対して、生物学的視点に加えて、発達論的・力動的視点からもケース検討を重ね、特に防衛機制等の側面からの理解を深めることで不適応行動に対してより治療的な対応が可能となるような臨床的技法の研究を進めています。

臨床心理学グループ

 力動的および認知行動療法的視点に基づいた症例検討会を行い、成果を積み上げています。また、日々の心理臨床業務において、精度の高い臨床心理学的データの集積を継続して行っています。

心理教育グループ

 統合失調症および他の精神病性障害の患者さんを対象に、患者さんが主体的に治療に取り組む態度の獲得、服薬アドヒアランスの向上、体重増加や肥満の予防を目的とした独自の心理教育プログラムを作成し、実践しています。また、このプログラムの有効性について検証する臨床研究を行っています。

精神腫瘍学グループ

 精神腫瘍学は腫瘍学・精神医学・心理学・免疫学・内分泌学・社会学・倫理学・哲学など多くの領域を統合し、癌の全ての臨床場面で患者・家族・治療者を支えることを目的としています。腫瘍センター緩和ケアチームとしての活動、緩和医療研修会の開催、専門外来(こころの緩和ケア)の開設により、関係者の支援を続けています。